アイアンの組み直し編

アイアンの組み直し編

アイアンを組み直す工程を紹介いたします。
「組み直し」とはアイアンのパーツはそのまま使用して能力を発揮させるように重さやバランス等を調整して組み立てることです。

1. まずお預かりしたアイアンの現状スペックを測定します

ロフト、ライ角がカタログ通りになっている量産品はまずありません。他に長さ、バランス等、計8項目を測定しておきます。

2. アイアンのヘッド部をばらします

ヘッドに熱を加えて接着剤を溶かすことでヘッドが外せます。

ばらしたシャフトには先端に不純物が入っていることがあります。

ばらしたシャフトには先端に不純物が
入っていることがあります。

真ちゅうや鉛など

 ばらした時にシャフトの中に写真のような真ちゅうや鉛など
詰め物が入っていた場合は取り除きます。

3. グリップを抜く、もしくは切り取ります

 ヘッドとグリップが外されました

 ヘッドとグリップが外されました。

 

4. ヘッドとシャフトの重量を測ります

ヘッドとシャフトそれぞれ単体の重量を測っておきます。

5. ばらしたシャフトの直進性、スパインをチェックします

まず直進性についてですが、シャフトには曲がっているものがあります。
曲がったシャフトは直進性が悪く使い物にならない上に真っ直ぐに修正することはできないものですので、まっすぐなシャフトに交換いたします(シャフト代は別途必要となります)

曲がりを確認
曲がりを確認

 テーブルで転がしてみたり、機材にかけて
曲がりを確認しています。

次にシャフトスパインですが、普通シャフトは360度均一な性能で曲がるのではなく、硬い方向、軟らかい方向が存在します。
このような力の向きの事を「シャフトスパイン」と呼び、カーボン、スチールシャフトともに存在します。
硬い方向、軟らかい方向の位置関係を把握してシャフトを装着すれば、全番手シャフトが暴れずに同じようにしなってくれます。

スパイン調整前

 スパイン調整前のシャフトの向きはシールが揃っています。

スパイン調整後

 スパイン調整後のシャフトの向きは番手ごとに異なります。
しかし性能は揃っているということなのです。

6. ステップの位置が揃っているかを確認

ステップの位置を合わせる事で硬さをフローにする事ができます。
量産品のアイアンセットの中には、ヘッドの挿入口の深さが番手ごとにばらばらなものもありますので、そのあたりも考慮してステップが揃うようにしてソケットをつけます。

 番手ごとのバラつきをなくす作業

 番手ごとのバラつきをなくす作業です。

7. ヘッドとシャフトを接着します

接着する前にヘッドの挿入口のクリアランス(あそび)がどれくらいなのかを考慮してヘッドとシャフトの挿入する角度がおかしくならないようにセル管などをかまして接着します。
接着剤は強度の強い工業用の2液タイプのエポキシ接着剤を使用しています。

8. ロフト、ライ角を測定、調整します

どんなに精度の高いヘッドでも若干の角度の狂いはありますので調整できる素材のヘッドであれば0.1度単位で角度を整えます。

すべての番手で測定と調整を繰り返し合わせていきます。

すべての番手で測定と調整を繰り返し合わせていきます。

 

9. グリップを装着します

グローブのサイズ、指の長さ、パーム、フィンガーでにぎるなどから最適サイズを事前に決めてそのサイズになるようにグリップを装着します。

10. バックフェースに鉛を貼ってバランス調整

量産品はバランスを合わせる手段としてシャフトのネック内に真ちゅう等の詰め物を入れて(2.参照)バランスを合わせています。
ヘッドの重量管理も行っていないため番手間の重量ピッチがバラバラで、大小さまざまな詰め物を詰めて補っています。
このままでは芯の位置が合わず正確なショットが出来ません。
本来ヘッドというものはコンピュータを駆使して緻密な計算のもとにヘッドの中心が芯になるように設計されています。
しかし組み立て時にはネックに詰め物を入れて組むので芯の位置がヘッドの中心では無くヒール寄りになってしまい、設計と異なるクラブになってしまっているのです。
ゴルフクラブのバランス理論というものは、本来、ヘッド、シャフト、グリップの重さ、長さの関係でのバランスです。
見かけの数値だけ合わせても本来の性能は発揮できないのです。
当店ではネックに詰め物をして重心をずらすようなことにならないために、バックフェースに鉛を貼ってバランスを整えています。

鉛テープを使うことでヘッドの芯が変わりません。

 鉛テープを使うことでヘッドの芯が変わりません。

 

11. クラブを計測して、スペック表を作成します

組みあがったアイアンのライ角・ロフト・長さ・バランスなど9項目を最終測定しデータを一覧にしてお渡しています。
以上が当店で行う組み直しの作業です。
クラブは組み直す事によってはじめてヘッド、シャフトの本来の性能を活かせるようになります。